空と海が見える部屋

地球にいながら宇宙旅行

メタルマクベスについて色々考えてみた話

 こんにちは。前回の記事では予想以上に多くの方に閲覧いただき大変驚いております。また、ブログを書いた事をきっかけにTwitterをフォローいただいたり皆様のメタマクへの思いやdisc2の解釈を知ることができて書いて良かったなと思っております。ありがとうございました。
 disc3も初日を目前に控え、またメタルマクベスのファン界隈は盛り上がっておりますが私のdisc3初日はもう少し先になりますので、引き続きdisc2の話をしようかと思います!


●マーシャルに見る自立心
 この子、大好きなんですけど私の中ではかなり謎が多かったというか……最終的に物語のキーパーソンになるのに、途中までなぜかものすごくひっそりとしている。ランダムスターの親友・エクスプローラー(王にはならないが王を生み出す男)の息子、と出自はハッキリしているのにマーシャルってどんな子?って聞かれるとちょっと答えにくい。自己主張の強いキャラクターだらけの物語において、逆の意味で異彩を放つキャラクターだなと思っていました。
 一言で表すなら、父ちゃんっ子。作中に母親は登場しませんが、エクスプローラーの死後はフェルナンデス地方の孤児院にいたみたいなので既に亡くなっている可能性は十分あり得る。まぁ存命でも避難のために……っていうのはあるかもしれませんが。ここでまず疑問。マーシャルあなた何歳なの問題。王子とは幼馴染で年もあまり離れていない感じ。少なくとも飲酒は合法っぽい。(飲み慣れては無さそう。それか下戸)2218年の法律はわからないけど現代に合わせると成人はしている気がする。施設で過ごすことができるのは基本的に18歳まで(例外的に20歳まで認められることもあるらしい)なので、父親を亡くしてからフェルナンデスに逃亡後に孤児院に入るのはどうなんだろう?という感じです。重箱の隅をつつくみたいでアレですが、18歳以上だからだめ!と機械的に入居を認めないということはあの国に無さそうなので(だってパール王の国だもの)何らかの事情で入居を認められた説なんじゃないかなと。
 ここで出てくるのが冒頭の自立心です。彼、やりたいこと(古着屋の店長)ややってみたいという気持ち(バイクのエンストを直す)は持っているけれど何かに対して能動的に動こう!っていう姿勢が著しく見られない気がします。ランディの目論見で父親共々命を狙われそうになっても彼は戦わない。というか戦えない。戦う父の姿だって見たことはあるだろうけれど、自らが剣を構えることは嵐の夜の襲撃の日まで無いんですよね。フェルナンデス国に着いてから初めて自分の携える剣を持ったのかもしれない。一人で生きていけるわけが無い!!!そりゃパール王だって孤児院入りを認めるよ……なんて飛躍しすぎですかね(笑)身分制度のはっきりした世界だから、軍人の息子なら自分もいつかは軍人になると思うのが普通なのではないかと思うのですが……あのビビり方だとそんなこと微塵も考えたことなさそう。どんどん幼くなっていったdisc2マーシャル、父に護られ、先に逃げた彼は何もできない子どもとして逃亡後、剣を握っただけでもう拍手喝采ですよ!!
 最後の襲撃、マーシャルは王子と共に秘密で鋼鉄城にもぐりこみます。ここで一瞬剣を構えるけれど「先に行け」と逃げるよう言われ、人を斬ることはありません。階下へ進むエレベーターを降りた先で敵の兵士と鉢合わせても逃げるだけ。もしかしたら私の聞き間違いかもしれないんですけど、公演の後半ラスト1週くらいの時に一度だけ「ジュニアの馬鹿ぁぁぁ!!!!」を「ジュニアどこぉぉぉぉ!?!!?」って言ってた気がするんですよ。一瞬だけ見えた自主性が見事に崩壊です。もう完全に頼る気でいる……この後彼は王子と再会できなかったのが悔やまれます。
 丘のクジラのくだりでマーシャルはどこにいたのかわかりませんが、最後トーカイさんに支えられながらそろりそろりと歩いた先で崩れ去った城を見て「予言」が本物になります。この時も最後の最後までなーんにも言わないですよね。「そんな、学級委員決めるみたいな感じていいんですか!?」とは言うけれどあの場面で「嫌だ、やりたくない」とは言わない。「なりたいか?」と聞かれたら「なりたくないよ」って言えるのにお前がやれよ的な雰囲気になったら言い返せなくなっちゃう。きっと自主性以前にとっても心が優しい子なんだと思います。上に立つ者として見ると彼が治める国に不安しかありませんが、多くの人の未来が経たれた世界で彼だけが無限の可能性を託されました。権力に興味は無いし、戦場も知らない。そんな彼が創る世界に「争い」はあるのでしょうか?もしかしたら……と私は期待してしまいます。


●王子とグレコ
 この秋、浅利グレコにりあこ発揮した方も多いのではないでしょうか。私の周りでは瞬間最高りあこ率を計測しました。……ジャニヲタのブログ感を演出してみましたが(何のためだ)観劇回数が増えるたびに「辛い……グレコ辛い……」ってなっていったので、王子との関係性も交えつつグレコの話をば。
 disc2のグレコ、とっても可愛くありません!?なんというかちょっとチャーミングな感じが。演じる浅利さんが身長162cmと少し小柄なのがビジュアル面から影響しているのだと思います。disc1のグレコは屈強な男性(山口馬木也さん)だったので見た目の時点でこれ負けるわけないじゃん的な感じありましたがdisc2グレコはちょいちょいマジで負けそうでハラハラしました。目が離せない。安定感抜群のdisc1に対していつだってイレギュラーな事が起きそうなdisc2にはピッタリですね!!
 それ以外にも良い意味で発声が舞台っぽくないというかあっさりとしていて(あさりだけに)毒気が薄いのにこいつ素性が知れないな!?って感じで彼を知りたいがためにどんどん目を奪われる。目が離せないだけじゃなくて奪われるなんてもう最強すぎるでしょう……。
 さて、そんなdisc2グレコとdisc2王子ですが教育係と王子という立場でありながら少し兄弟感が強くていいなって思っていたらやっぱり教育係と王子で「そこは関係性しっかりしてる……!」ってなりました(笑)徳永くんの報告で「マジマジマジでぇ!?」って声を揃えて騒ぐところがありますが、手を取り合って徳永くんのまわりをぐるっとしている時の視線の動き方が兄弟のそれではない。グレコが王子に合わせてる感じですかね。王子を見守りながら、必要な時だけ然るべき方角へ導く感じ。普通の兄は弟をあんなに優しく扱わないと思う。普段の言動は王子の明朗快活な性格も影響しているのかグレコが王子に直接何かを言って聞かせることはなさそうですよね。小さい時はわからないけれど、ここは妄想の範囲で楽しみます。
 王子はグレコに対して言葉を促すような問いかけが多いなと思います。グレコレスポール王の暗殺が起きたことを王子に伝えようとして言葉を詰まらせた時はストレートに「泣いてちゃわからん、ハッキリ言え」と言うし、フェルナンデス国を訪れたグレコが一人だと気付いた時は「お前……家族は?」と聞く。家族を殺された悲しみや怒りを力に変えて復讐心に火をつけグレコを鼓舞する時は「さぁ!」と手を差し伸べる。二人とも普通に喋った時の声がまぁまぁ高めなのでここぞと言うときに出てくる重みのある低い声、勢いのある声がよく映えます。
 グレコは「坊ちゃんの教育係」でありながら王子を王子として見るだけでなく一人の人として尊重してくれていたようにも見えます。「堪えろグレコ!」からの流れ、自分より地位が高い人の言葉であっても自分より一回り程度若い相手から言われたらちょっとこたえるんじゃないかなぁ。自分が世帯主となるような、自分が主体的につくった家族を失った直後にあれを言われてふざけるな!少し黙ってくれ!ってならないの、冷静に考えるとなかなかできることじゃないよなぁ……と。だって王子には愛する妻も子どももいないんだもの。家族を亡くした点では一緒でも家族の形が違う。そう考えるとグレコの王子への思いはとても厚みのある信頼関係からなるものだったのだと思います。
 1980年代のシーンでは、元きよしがマクベスを始めとするバンドをひっちゃかめっちゃかに引っ掻き回そうとします。髪は切って、ギターソロは廃止。ナンプラーは改名、バンクォーさんはお父さんキャラに仕立て上げようとしますがそれを渋るメンバーに対してマクダフはすごくすんなりとそれらを快諾し実行してしまう。マクダフには「金が要る」という目的もありなりふり構っていられない事情がありますが、それを差し引いても元きよしの言葉に従順すぎるというか……この辺も王子と教育係という関係性の名残りなんでしょうかねぇ?
 ついでに言うようですが、元きよしくんのアドバイス(?)シーンのバンクォーさんへの態度がかなり好きです。ローズが先に言う「本当は大きい子どもとかいるんじゃないの……?」って台詞、ジャニヲタは二重の意味で笑えるのですが、演じる岡本健一さんよりもナンプラー河野まさとさんの方が若干年上なのにそれを差し置いて「バンクォーさん」って呼んでるの絶妙なレベルのメタネタって感じが素晴らしいです。健一さんも河野さんも全然年相応に見えないのでひどいなぁ…と思ってしまいがちですがコミカルでいいシーンですよね。「お父さんキャラで行きましょっか!」の左右に足をカパカパする動き、バンクォーさんもつられてやってるの大変可愛かったです。


●一人の青年に宿る光と影
 希望を人の形に塗り固めたような、そんな眩さがdisc2王子、もとい原ジュニアにはありました。敬愛する父上の遺志を継ぎ、誰よりも光り輝き、その光は隣国の王であるパール王も突き動かしました。誰もが導かれ、そして誰もが彼に着いていきたい、そう思われるキャラクター像はまごうこと無き正統な王位継承者。そんな彼も、「人殺し」なんですよね。
 これはいつの時代でも言えると思うのですが、戦争で敵の兵士を殺すことは殺人なのか?という話。戦争、あるいは祖国奪還、敵討ち。それらの大義名分のもと行われる人殺しは罪では無い。殺せば殺すほど英雄として語られる。ランディだって戦の名手、鋼の将軍と謳われ王国のナンバーツーまで上りつめ、レスポール王からの信頼を得ていた。誰かの幸せな家庭を壊しているのにそれを咎められることがなかった。それなのに、王を殺すことは重罪でした。王子が直接手にかけたのはランディほど多くはないけれど、王を殺したという点においてはランディと一緒。そのあと、彼自身も死んだかどうかの違いだけ。同じ人殺し。突き詰めれば色々違うしランディは王を殺したあとについた王位で暴君となり民衆の幸せな生活を脅かす根源となるのに対し王子はその後政治に関わらない(死んでるから)のがその後語られるであろう歴史で大きな違いを生むわけですが、こう考えると王子ってどう語られるのが正解なんだろう?という気がしてきます。難しいこと考えなければ英雄なんですけどね……。
 はやく父上のような立派な王にならなければという焦り、彼にあったと思いますか?私は「有ると言えば有るが無いと言えば無いハッキリしない感情(ローラボイス)」で考えが停止します。ゼマティスの処刑シーン、「このような下劣な謀反人、王自らが手を汚すまでもない」とギロチンのスイッチを入れる役を志願しますが「手を汚すまでも」と言ってる時点で処刑も殺人だとわかっているような気もするし、そうではなくて下劣な謀反人を手にかけることでその手が汚れてしまうから(つまり殺人が問題ではない)自分が、と思っているような気もするし。前者なら謀反人に対する罰を執行する王の役割を自分が請け負うことで王になる度胸を誇示したいようにに見えます。(怯んでなどいられません!って言うし)後者なら、王になる覚悟以前に謀反という正義に背く行為がただ許せないという思いが根底にあるのかなと。
 誰もが崇高な存在だと信じているレスポール王を殺した手、彼の血が付いた手も精神を病んだランディ夫人には汚れた手になる。結局のところ、人を殺す理由だとか状況だとか考えても同等に殺人は殺人なんですよね。王子は処刑で手を汚し、その手で雷を引き寄せさらなる殺人をする。それをとやかく言う人はいない。王子はことことをどう思っていたのでしょうかね……彼の唯一の影、それは殺人を犯したという事実なんだと思います。



 ……さて!王子に親しい人物であるマーシャルとグレコの話、そして王子の話をしてみましたがなんだこれ!どう考えても王子を救えない!!マーシャルがあの結末を迎えてグレコは王位につかないの、「そういうこと」だと思っているしマクベスという物語が殺人をテーマにしていると言われているので避けて通れない話題なんだと思いますが、それでもですよ!!辛すぎる!!!
 そしてここまでつらつらと語りましたが一部を除いてこの話や考え方、disc2のキャラクター造詣に限った話ではないんですよね。でも、こうやって考えてみてそれぞれのキャラクターの印象の土台を自分の中に落とし込むことができました。disc3を見ればdisc2との違いに気付くこともできると思うので、disc3を見てdisc2だけのキャラクター像を見つけたいですし、disc3のキャラクターについても考えてみたいです。
 そして前の記事と合わせても全く触れることのできなかったエクスプローラーとパール王、魔女たち、グレコ夫人とローマン、他のみんな……彼らのこともものすごく愛しています。でも、考察したり語ったりするには私の手に負えない濃いキャラクターたちなので、下手なことは言わずにTwitterでぽちぽち話せたらいいなぁ。

 一つ前の記事、締めがジャニヲタの担降りブログ感満載でしたが、感動しました、と言っていただけて嬉しかったです。今のところ原担ライフは順調です。もちろん原くんだけじゃなくてこれからも新感線の舞台を継続的に見ていきたいし、出演者の皆さんの今後の活動もできる範囲で観てみたいなと思っています。まだまだ私の頭の中はメタルマクベスでいっぱい!閲覧いただきありがとうございました!