空と海が見える部屋

地球にいながら宇宙旅行

メタルマクベスについて色々考えてみた話

 こんにちは。前回の記事では予想以上に多くの方に閲覧いただき大変驚いております。また、ブログを書いた事をきっかけにTwitterをフォローいただいたり皆様のメタマクへの思いやdisc2の解釈を知ることができて書いて良かったなと思っております。ありがとうございました。
 disc3も初日を目前に控え、またメタルマクベスのファン界隈は盛り上がっておりますが私のdisc3初日はもう少し先になりますので、引き続きdisc2の話をしようかと思います!


●マーシャルに見る自立心
 この子、大好きなんですけど私の中ではかなり謎が多かったというか……最終的に物語のキーパーソンになるのに、途中までなぜかものすごくひっそりとしている。ランダムスターの親友・エクスプローラー(王にはならないが王を生み出す男)の息子、と出自はハッキリしているのにマーシャルってどんな子?って聞かれるとちょっと答えにくい。自己主張の強いキャラクターだらけの物語において、逆の意味で異彩を放つキャラクターだなと思っていました。
 一言で表すなら、父ちゃんっ子。作中に母親は登場しませんが、エクスプローラーの死後はフェルナンデス地方の孤児院にいたみたいなので既に亡くなっている可能性は十分あり得る。まぁ存命でも避難のために……っていうのはあるかもしれませんが。ここでまず疑問。マーシャルあなた何歳なの問題。王子とは幼馴染で年もあまり離れていない感じ。少なくとも飲酒は合法っぽい。(飲み慣れては無さそう。それか下戸)2218年の法律はわからないけど現代に合わせると成人はしている気がする。施設で過ごすことができるのは基本的に18歳まで(例外的に20歳まで認められることもあるらしい)なので、父親を亡くしてからフェルナンデスに逃亡後に孤児院に入るのはどうなんだろう?という感じです。重箱の隅をつつくみたいでアレですが、18歳以上だからだめ!と機械的に入居を認めないということはあの国に無さそうなので(だってパール王の国だもの)何らかの事情で入居を認められた説なんじゃないかなと。
 ここで出てくるのが冒頭の自立心です。彼、やりたいこと(古着屋の店長)ややってみたいという気持ち(バイクのエンストを直す)は持っているけれど何かに対して能動的に動こう!っていう姿勢が著しく見られない気がします。ランディの目論見で父親共々命を狙われそうになっても彼は戦わない。というか戦えない。戦う父の姿だって見たことはあるだろうけれど、自らが剣を構えることは嵐の夜の襲撃の日まで無いんですよね。フェルナンデス国に着いてから初めて自分の携える剣を持ったのかもしれない。一人で生きていけるわけが無い!!!そりゃパール王だって孤児院入りを認めるよ……なんて飛躍しすぎですかね(笑)身分制度のはっきりした世界だから、軍人の息子なら自分もいつかは軍人になると思うのが普通なのではないかと思うのですが……あのビビり方だとそんなこと微塵も考えたことなさそう。どんどん幼くなっていったdisc2マーシャル、父に護られ、先に逃げた彼は何もできない子どもとして逃亡後、剣を握っただけでもう拍手喝采ですよ!!
 最後の襲撃、マーシャルは王子と共に秘密で鋼鉄城にもぐりこみます。ここで一瞬剣を構えるけれど「先に行け」と逃げるよう言われ、人を斬ることはありません。階下へ進むエレベーターを降りた先で敵の兵士と鉢合わせても逃げるだけ。もしかしたら私の聞き間違いかもしれないんですけど、公演の後半ラスト1週くらいの時に一度だけ「ジュニアの馬鹿ぁぁぁ!!!!」を「ジュニアどこぉぉぉぉ!?!!?」って言ってた気がするんですよ。一瞬だけ見えた自主性が見事に崩壊です。もう完全に頼る気でいる……この後彼は王子と再会できなかったのが悔やまれます。
 丘のクジラのくだりでマーシャルはどこにいたのかわかりませんが、最後トーカイさんに支えられながらそろりそろりと歩いた先で崩れ去った城を見て「予言」が本物になります。この時も最後の最後までなーんにも言わないですよね。「そんな、学級委員決めるみたいな感じていいんですか!?」とは言うけれどあの場面で「嫌だ、やりたくない」とは言わない。「なりたいか?」と聞かれたら「なりたくないよ」って言えるのにお前がやれよ的な雰囲気になったら言い返せなくなっちゃう。きっと自主性以前にとっても心が優しい子なんだと思います。上に立つ者として見ると彼が治める国に不安しかありませんが、多くの人の未来が経たれた世界で彼だけが無限の可能性を託されました。権力に興味は無いし、戦場も知らない。そんな彼が創る世界に「争い」はあるのでしょうか?もしかしたら……と私は期待してしまいます。


●王子とグレコ
 この秋、浅利グレコにりあこ発揮した方も多いのではないでしょうか。私の周りでは瞬間最高りあこ率を計測しました。……ジャニヲタのブログ感を演出してみましたが(何のためだ)観劇回数が増えるたびに「辛い……グレコ辛い……」ってなっていったので、王子との関係性も交えつつグレコの話をば。
 disc2のグレコ、とっても可愛くありません!?なんというかちょっとチャーミングな感じが。演じる浅利さんが身長162cmと少し小柄なのがビジュアル面から影響しているのだと思います。disc1のグレコは屈強な男性(山口馬木也さん)だったので見た目の時点でこれ負けるわけないじゃん的な感じありましたがdisc2グレコはちょいちょいマジで負けそうでハラハラしました。目が離せない。安定感抜群のdisc1に対していつだってイレギュラーな事が起きそうなdisc2にはピッタリですね!!
 それ以外にも良い意味で発声が舞台っぽくないというかあっさりとしていて(あさりだけに)毒気が薄いのにこいつ素性が知れないな!?って感じで彼を知りたいがためにどんどん目を奪われる。目が離せないだけじゃなくて奪われるなんてもう最強すぎるでしょう……。
 さて、そんなdisc2グレコとdisc2王子ですが教育係と王子という立場でありながら少し兄弟感が強くていいなって思っていたらやっぱり教育係と王子で「そこは関係性しっかりしてる……!」ってなりました(笑)徳永くんの報告で「マジマジマジでぇ!?」って声を揃えて騒ぐところがありますが、手を取り合って徳永くんのまわりをぐるっとしている時の視線の動き方が兄弟のそれではない。グレコが王子に合わせてる感じですかね。王子を見守りながら、必要な時だけ然るべき方角へ導く感じ。普通の兄は弟をあんなに優しく扱わないと思う。普段の言動は王子の明朗快活な性格も影響しているのかグレコが王子に直接何かを言って聞かせることはなさそうですよね。小さい時はわからないけれど、ここは妄想の範囲で楽しみます。
 王子はグレコに対して言葉を促すような問いかけが多いなと思います。グレコレスポール王の暗殺が起きたことを王子に伝えようとして言葉を詰まらせた時はストレートに「泣いてちゃわからん、ハッキリ言え」と言うし、フェルナンデス国を訪れたグレコが一人だと気付いた時は「お前……家族は?」と聞く。家族を殺された悲しみや怒りを力に変えて復讐心に火をつけグレコを鼓舞する時は「さぁ!」と手を差し伸べる。二人とも普通に喋った時の声がまぁまぁ高めなのでここぞと言うときに出てくる重みのある低い声、勢いのある声がよく映えます。
 グレコは「坊ちゃんの教育係」でありながら王子を王子として見るだけでなく一人の人として尊重してくれていたようにも見えます。「堪えろグレコ!」からの流れ、自分より地位が高い人の言葉であっても自分より一回り程度若い相手から言われたらちょっとこたえるんじゃないかなぁ。自分が世帯主となるような、自分が主体的につくった家族を失った直後にあれを言われてふざけるな!少し黙ってくれ!ってならないの、冷静に考えるとなかなかできることじゃないよなぁ……と。だって王子には愛する妻も子どももいないんだもの。家族を亡くした点では一緒でも家族の形が違う。そう考えるとグレコの王子への思いはとても厚みのある信頼関係からなるものだったのだと思います。
 1980年代のシーンでは、元きよしがマクベスを始めとするバンドをひっちゃかめっちゃかに引っ掻き回そうとします。髪は切って、ギターソロは廃止。ナンプラーは改名、バンクォーさんはお父さんキャラに仕立て上げようとしますがそれを渋るメンバーに対してマクダフはすごくすんなりとそれらを快諾し実行してしまう。マクダフには「金が要る」という目的もありなりふり構っていられない事情がありますが、それを差し引いても元きよしの言葉に従順すぎるというか……この辺も王子と教育係という関係性の名残りなんでしょうかねぇ?
 ついでに言うようですが、元きよしくんのアドバイス(?)シーンのバンクォーさんへの態度がかなり好きです。ローズが先に言う「本当は大きい子どもとかいるんじゃないの……?」って台詞、ジャニヲタは二重の意味で笑えるのですが、演じる岡本健一さんよりもナンプラー河野まさとさんの方が若干年上なのにそれを差し置いて「バンクォーさん」って呼んでるの絶妙なレベルのメタネタって感じが素晴らしいです。健一さんも河野さんも全然年相応に見えないのでひどいなぁ…と思ってしまいがちですがコミカルでいいシーンですよね。「お父さんキャラで行きましょっか!」の左右に足をカパカパする動き、バンクォーさんもつられてやってるの大変可愛かったです。


●一人の青年に宿る光と影
 希望を人の形に塗り固めたような、そんな眩さがdisc2王子、もとい原ジュニアにはありました。敬愛する父上の遺志を継ぎ、誰よりも光り輝き、その光は隣国の王であるパール王も突き動かしました。誰もが導かれ、そして誰もが彼に着いていきたい、そう思われるキャラクター像はまごうこと無き正統な王位継承者。そんな彼も、「人殺し」なんですよね。
 これはいつの時代でも言えると思うのですが、戦争で敵の兵士を殺すことは殺人なのか?という話。戦争、あるいは祖国奪還、敵討ち。それらの大義名分のもと行われる人殺しは罪では無い。殺せば殺すほど英雄として語られる。ランディだって戦の名手、鋼の将軍と謳われ王国のナンバーツーまで上りつめ、レスポール王からの信頼を得ていた。誰かの幸せな家庭を壊しているのにそれを咎められることがなかった。それなのに、王を殺すことは重罪でした。王子が直接手にかけたのはランディほど多くはないけれど、王を殺したという点においてはランディと一緒。そのあと、彼自身も死んだかどうかの違いだけ。同じ人殺し。突き詰めれば色々違うしランディは王を殺したあとについた王位で暴君となり民衆の幸せな生活を脅かす根源となるのに対し王子はその後政治に関わらない(死んでるから)のがその後語られるであろう歴史で大きな違いを生むわけですが、こう考えると王子ってどう語られるのが正解なんだろう?という気がしてきます。難しいこと考えなければ英雄なんですけどね……。
 はやく父上のような立派な王にならなければという焦り、彼にあったと思いますか?私は「有ると言えば有るが無いと言えば無いハッキリしない感情(ローラボイス)」で考えが停止します。ゼマティスの処刑シーン、「このような下劣な謀反人、王自らが手を汚すまでもない」とギロチンのスイッチを入れる役を志願しますが「手を汚すまでも」と言ってる時点で処刑も殺人だとわかっているような気もするし、そうではなくて下劣な謀反人を手にかけることでその手が汚れてしまうから(つまり殺人が問題ではない)自分が、と思っているような気もするし。前者なら謀反人に対する罰を執行する王の役割を自分が請け負うことで王になる度胸を誇示したいようにに見えます。(怯んでなどいられません!って言うし)後者なら、王になる覚悟以前に謀反という正義に背く行為がただ許せないという思いが根底にあるのかなと。
 誰もが崇高な存在だと信じているレスポール王を殺した手、彼の血が付いた手も精神を病んだランディ夫人には汚れた手になる。結局のところ、人を殺す理由だとか状況だとか考えても同等に殺人は殺人なんですよね。王子は処刑で手を汚し、その手で雷を引き寄せさらなる殺人をする。それをとやかく言う人はいない。王子はことことをどう思っていたのでしょうかね……彼の唯一の影、それは殺人を犯したという事実なんだと思います。



 ……さて!王子に親しい人物であるマーシャルとグレコの話、そして王子の話をしてみましたがなんだこれ!どう考えても王子を救えない!!マーシャルがあの結末を迎えてグレコは王位につかないの、「そういうこと」だと思っているしマクベスという物語が殺人をテーマにしていると言われているので避けて通れない話題なんだと思いますが、それでもですよ!!辛すぎる!!!
 そしてここまでつらつらと語りましたが一部を除いてこの話や考え方、disc2のキャラクター造詣に限った話ではないんですよね。でも、こうやって考えてみてそれぞれのキャラクターの印象の土台を自分の中に落とし込むことができました。disc3を見ればdisc2との違いに気付くこともできると思うので、disc3を見てdisc2だけのキャラクター像を見つけたいですし、disc3のキャラクターについても考えてみたいです。
 そして前の記事と合わせても全く触れることのできなかったエクスプローラーとパール王、魔女たち、グレコ夫人とローマン、他のみんな……彼らのこともものすごく愛しています。でも、考察したり語ったりするには私の手に負えない濃いキャラクターたちなので、下手なことは言わずにTwitterでぽちぽち話せたらいいなぁ。

 一つ前の記事、締めがジャニヲタの担降りブログ感満載でしたが、感動しました、と言っていただけて嬉しかったです。今のところ原担ライフは順調です。もちろん原くんだけじゃなくてこれからも新感線の舞台を継続的に見ていきたいし、出演者の皆さんの今後の活動もできる範囲で観てみたいなと思っています。まだまだ私の頭の中はメタルマクベスでいっぱい!閲覧いただきありがとうございました!

メタルマクベスが楽しかった話

 西暦2018年を生きる人間の脳内にマイクロチップは埋め込まれていないはずなのに、メタルマクベスの楽曲が頭から離れない今日この頃ですこんにちは。はじめまして、ゆっかと申します。

 私が言いたいのはただひとつ、「メタルマクベス最高!!!」ただそれだけ。初演は見ていないし、観るきっかけは宇宙Six原嘉孝くんが出演することだったのでdisc1も予習程度に二回観劇しただけなのですが、disc2の幕が上がっておよそ一ヶ月半、欲望のままに毎週末豊洲でぐるぐるしてしまうほどメタルマクベスの虜です。これ書いている間に千秋楽終わっちゃって失意のどん底ですが、disc2が終わってもdisc3があるし、そっちも何回か観劇します。
 ということで、「メタルマクベスの話をする為だけにペンを執ろう!」(ペンじゃない)(観劇した方にはわかるパロディ台詞)をテーマになんかうだうだ話します。ステマダイマだってそんな大層なことはできないので、以下めちゃめちゃ長い独り言です!でもみんな観に行ってくれたら嬉しいな!!

●初見のインパクトが尋常じゃない
 先述の通り、私の初メタマクはdisc1です。座席が動くことだけは頭に入れていましたが、「うわー!本当に回ってるぅぅぅ!!」と幼稚園児もびっくりの頭弱い感じの感想を胸にアトラクション感覚でお行儀よく観劇しました(笑)よく乗り物酔いの心配をされている方もいらっしゃいますが、私は酔うことなく終わりました。(この時の座席は31列だったのでだいぶ後方。遠心力はかかってたはず)どちらかというと動きよりも映像による浮遊感で酔う感じでしょうか。でもそういう時はまぶたを閉じればオッケーです。
 インパクトの話に戻りますが、ランダムスター・ランダムスター夫人が権力欲しさをきっかけに主君レスポール王を手にかけ、王冠を手にするものの疑心から不信感を募らせてどんどんと精神を病んでいく物語。そこには魔女の予言と1980年代のバンド「メタルマクベス」のメンバーの生き様とアルバムの収録楽曲が絡んできて……という突飛な設定がとにかくすごい。戦乱の世を生きたこともメタルバンドのおっかけをしたことも無いのになぜか心がすっと受け入れ体制に入る。なんでだ。シェイクスピアクドカンもすげぇ。そして戦乱の世と1980年代がリンクしているので役者さんも最低でも一人二役をこなされるわけですが、このギャップがたまらない。あんなに頼もしいグレコがなんでファンに手を出しちゃうマクダフとして成立するの!?あんなに高貴さに満ちあふれたパール王がなぜ過去の世界ではつかみ所がなさすぎるナンプラーなの!?でも不思議なことに一人の役者さんを通してこの二人が共存してしまう。特に1980年代のキャラクタービジュアルは見た目からしてとてつもなく強烈なので脳内がパニックになります。でも癖になるんだこれが……!
 とはいえ、インパクト・オブ・インパクトすぎて初見では何がなんだかって感じで(せめて名前くらいは把握すべきだったという個人的な反省です。皆様ご観劇の際はホームページなどでどの役者さんが誰と誰を演じているか確認しておくと良いかと思います)最終的な感想が「ランディ夫妻にとって・この国にとって一番幸せになれる終わりってこの世に存在するのだろうか」と「松下優也氏がひたすらイケメンな時間が三回くらいある」に集約されました。そして次の瞬間、「これは増やさなければ」と本能が叫び始めた次第であります。金が無い?そんなの働けばどうにでもなる!ってこの時初めて心の底から思いました。
 ちなみに、シェイクスピアの「マクベス」自体はこの時点で予備知識が全く無くて観劇後に某ペディアで調べました。あのオチ(語弊)原典通りなのかよ、って学のない感想を持ちました……大きく味付けはされているけれど、味付け後のテイストかなり好きです。好みの問題かもしれないので万人に勧める感じではないのですが私と好みが似通った方は好きだと思います。近いうちにちくま文庫版も読みたいと思います。

●そして迎えたdisc2
 disc1の観劇で作品に対する期待値と信用度が最高潮だったので、初日のチケットを毎日のように眺めながら幕が上がるのを待ち遠しく思っていました。原くんのパフォーマンスは全てを追いかけていたわけではないけれど全面的に信頼を置いているため、心配することは何もありませんでした。(このへんが担当さんとそうでない人の違いかもしれませんね)そしてその信頼の通り、毎週ステアラでぐるぐるしてしまいました。
 disc2の特徴としてよく挙げられるのが「若さと勢い」ですが、本当にその通りで若さゆえの愚かさがすごくよく顕れていると思います。「若気の至り」なんて言葉もありますが、まさしくその至りが取り返しのつかないところまで発展してしまう。若い人は一般的にガンの進行が早いのと同じ原理で(?)悪に染まってから墜ちるところまで墜ちていく時間がきっとものすごく早かったのではないかな、と思わされます。一幕とニ幕のあいだにどれくらいの時が流れていたのかは明言されていないですけど、disc2のほうがdisc1よりも早そう。鋼鉄城が味気ない鉄の塊だったことに気がついて目が覚めるまできっとあっという間で短い栄華だったのではないかなと思います。だからこそ、夫人の胸に宿る空しさが大きい。王の妻になって華やかな毎日を送るはずだったのに、ランディはもう自分を見てくれない。民衆のランディに対する視線も冷たくて見ていられない。おごれる者も久しからず、ただ春の夜の夢の如しなわけです。
 disc2に流れる時間の早さが、観客により疾走感を与えてくれているのかなと思います。きっとランディがローラに手を下すという決断に至るのもあまり悩まなかっただろうし、グレコもそこそこ早い段階で王子を迎えに行く。王子だって時が来たそのとき、もう即決で城に攻め込んだに違いない。何もかもが勢い。考えている暇なんて無い。観客の私たちも、上演時間の四時間を秒で終える。この世で最も有意義な13500円の使い方!
 歌舞伎役者としてご活躍の尾上松也さん、大人気歌手の大原櫻子さんによるランダムスター夫妻。それぞれ普段のフィールドが違うだけにどんな夫婦になるのだろう?と最初は思っていましたが、これもdisc2を観劇された方によっていろんな解釈が飛び交って面白かったです。この二人に愛はあるのか?問題。私はお互いがお互いへの愛でいっぱいだったと解釈しました。王の妻になることに執着を見せた櫻子夫人、きっと松也ランディより設定上も結構年下だと思うんです。それこそ、正統な王位継承者であるレスポールJr.と結婚してもおかしくないくらい。(櫻子さんは原くんと同学年です)でも、ずっとランディと一緒にいた。ランディは自分をお姫様のように可愛がってくれて、美しい女王様にしてくれる運命の人。彼女の目的はランディを王にすることではなくて自分自身が王の妻になることだったかもしれないけれど、それと同時に誰かからものすごく愛されたかったのではないかなと思います。自分を誰よりも愛してくれる、それがランディだった。王子は生まれたときから王子だったためか、誰か一人を愛する人ではなくて博愛主義的な面が強かったように見えました。誰にでも優しい男じゃ夫人は満足できないだろうなぁって。だって女の欲望には際限がありませんからね……。松也ランディから櫻子夫人への愛は説明するまでもないですよね。「私の失意」なんてもうめちゃめちゃ泣けたもん。あ、「私の失意」なんですけど一度だけとんでもない下手の席に入った時前の人の頭でランディの姿が全く見えなくてギターを抱きながら歌うランディの影だけを見ていたことがあるんです。影だけでランディの空しさが伝わってきてそれはそれは感動しました。影で感情は伝わる。話を戻して、二人の愛なんですけども。終盤「君の病気が治ったら……ローズ、結婚しよう?」「いやぁよ」「どうして」「あなた病気だもの。看病はいや。未亡人になるのはもっといや……」のシーン。公演も後半にさしかかった頃、「結婚しよう?」の言い方が小さな子供に問いかけるそれになっていてずっとランディにとって大きすぎるくらいに大きかった夫人がちょっとだけ、ランディと同じ大きさになった気がしました。それでもまだまだ大きいんですけどね。でも、自分が思っているより驚くほど小さかった夫人の自己評価に対しての答えでもあるんじゃないかな?なんて思います。看病も未亡人になるのもいやな夫人。私は最初、「かつて王の妻だった女」になるのが嫌だったんだろうなって思っていたのですが、「レスポールには妻がいた、どんな気持ちかしら?夫を亡くすなんて」と泣き叫んだのち力なく呟く姿を数回の観劇で見ているうちに「夫人が、レスポール夫人の気持ちを考え頭をパンクさせている」ことにぐっときて。夫を亡くしたら、寒くて辛い地獄から助けてくれる人がいなくなるんだって夫人はわかっているんだろうなと思うと夫人には他の誰でもないランディが必要で、ランディじゃなきゃだめだったのだろうと思います。
 決してdisc1と比較するわけではないですが(比較するほど1をきちんと観れていないし考察もできていないので)1と2で描かれている夫婦像が違うだけにこの見方ができたのもdisc2ならではだったと思っています!他にも語りたいことはあるんだけど今回は省略!書きたくなったら書きます!

原嘉孝という正統な王位継承者
 私がメタルマクベスを観に行くきっかけとなった男、原嘉孝。私の特別長くは無いけど短すぎるほどでもないJr.担人生の中で、彼の姿を見る機会はそれこそ何度もありました。(だって彼どこにでも出てる)がっしりとしているのに時折華奢にも見えるその体型と踊り方、雑誌でうかがえる値が真面目な性格が大好きで原くんを見るために現場に行くこともありましたので、今回もその延長でチケットを取り豊洲まで足を伸ばした次第であります。
 でかいステージのど真ん中で歌い、踊り、戦い、お芝居をする。いっぱしのジャニーズJr.が立つ舞台としてこれ以上の場所があるのか?と考えたときに、脳内で「いや、ない」と反語を用いてしまいました。無いことはないかもしれませんけど、滅多にあることじゃない。しかもいわゆる外部舞台ですよ!ジャニーズ事務所からは原くんと健一さんだけ!客層もいつもとは全然違う!誰もがうらやましがる夢の舞台なんじゃないかな?ってくらいのステージで、ここで華麗に舞う担当の姿を見ることができる原担は今のJr.担の中で誰よりも幸せなんじゃないか?と外野ながらに思いました(笑)直接聞いたわけではないですが、原担さんそのへんいかがでしょうか?
 原くんの素晴らしさ・格好良さ・愛らしさは他の方が各々語ってくださっていると思うので、私からは劇中の様子から見えた彼の印象を書いてみようかなと思います。
 人間は「上品さ」と「野心あふれる泥臭さ」をひとつの身体の中に共存させることが可能である。しかしそれを成し遂げることができる人はそう多くない。……とまぁ、こんな感じでしょうか。原くんは本当に王子様でした。パンフレットで自らを王子様キャラじゃないと語っていらっしゃいましたが、あれを王子様と呼ばずに誰を王子様と呼ぶのでしょうか。指先の所作から雄大な歩き方、視線の動かし方の綺麗さまで、どこを切り取っても彼は「王位継承者」そのものでした。王子様って言うとお姫様となる女性を白馬で迎えに行き甘い言葉と共に手を差しのべて二人だけの迷宮に誘うような、そんなイメージがあると思いますが(少なくとも王子様「キャラ」はそんな感じだと思う。一人のプリンセスと結ばれてめでたしめでたし的な感覚)この世界の王子はあくまで「王の息子」であり民衆を然るべき方角へ導き、先頭に立って愛と平和のあふれる世界を作り出していく先導者なんだよなと思います。レスポール王も家臣がいつか自分を暗殺するかもしれない可能性を頭の片隅に抱えながらそれを決して口にすることなく生きていました。兵器の類を嫌い、人の痛みを知ることで不用意な争いが起こらないようにしていたことも劇中の様々な台詞から伺えます。王の葬列の時の家臣の悲しみからもそれが伺えます。王子もその王と優しい教育係グレコに育てられ多くの信頼を得ていたのでしょう。最後のシーンで徳ちゃんのお母さんが「じゃあ、Jr.様も……」と言うところ。お母さんは王子までもが城に攻め込んでいることを知るはずがないので普通だったら安否なんて気にかけないと思うんですよ。そこにいないから。でも真っ先に王子の生死を気にするところはやっぱり王子を正統な王位継承者として信頼していたんだなと。原くんはその王位継承者としての説得力にあふれていました。ただのお人好しではなくて、言いたいことはきちんと言うし行動で示す。人の心に寄り添うことも忘れない。いつも少しだけ前のめりで、その瞳に強い光を宿しているところが彼の野心の顕れだったように感じます。彼に着いていきたい・彼のおさめる国で生きていきたい。そう思える王子様でした。
 野心って見せれば見せるほど上品さから離れていくと思うんです。ふたつの言葉は対義語の関係にあるわけでは無いけれど、崇高な人は野心を表に出さない。やりたいことを成し遂げるための貪欲さは誰だって持っているけれど、王子のような位の高い人はその目的に躍起になることなくまるで最初から持っていたかのように見せることすらも王子としての民衆に向けたパフォーマンスのひとつだと私は思っているのでそこをかなぐり捨ててでも自分の意志を言うことで周囲の人の気持ちを奮い立たせていく王子の姿勢にとても心を打たれました。

●そしてdisc3へ
 あっという間に終わってしまったdisc2ですが、その余韻も覚めないうちにdisc3の初日が近付いてきましたね。ライブビューイングの日程も発表されて、当日の仕事との兼ね合いで申し込むかどうかをめちゃめちゃ悩んでいる最中です。劇場には行きます。ポスターを見ても圧倒的”美”って感じのdisc3、目がその輝きに負けないように注意して臨まなければと思っております。
 disc1とdisc2のランディ夫妻が全然違っていたように、disc3の浦井・長澤夫妻もまた違う夫婦像が、愛の物語が描かれることと思います。そして個人的にはやっぱり真宙Jr.が気になります。高杉くんのことはドラマ「高校入試」(なんと主演が長澤まさみ様)と「仮面ライダー鎧武」で拝見していたくらいなのですが、どちらもいいこちゃんな優等生に見えて影が強い役だったので王子のような役がどのようにハマるのか楽しみです。松下Jr.が短剣にキスを落とし、原Jr.が短剣に祈りを捧げたあの二人とも解釈大正解な名シーンが高杉Jr.ではどのようになるのか?答えが出たら同志のみなさんと語り合いたいくらいに早く観たい!!
 今回の観劇を通して「メタルマクベス」という作品の大ファンになったので、愛したdisc2が終わってもその登場人物たちの魂が役者という器を替えてステージ上に生き続けることが嬉しいです。disc2ロスだけど、disc3が終わったら本当にロスになるんだろうなぁ。全部終わったらメタルマクベス感謝祭とかやらないかなぁ。レスポールJr.ナイトとかやらないかなぁ。そんなことばかり考えています。


 さて、長々と書き連ねましたが役者さんたちがブログやSNSで前に進んでいる様子を見るとずっとうだうだしているわけにもいかないな!という気持ちになります。メタルマクベスがいち観客である私にくれた感情を大切に、この舞台のことをたまに思い返しながら私もさらなるヲタク道を進んでいこうと思います。
 9月15日の初日に観劇してからずっと決めていたこと。disc2の千秋楽の日に私は原担になろう。毎週毎週劇場に通い、彼の姿を見る度にその思いは強くなっていきました。10月25日、disc2の千秋楽を無事に迎えられたこと、本当に嬉しく思います。おめでとうございます。原嘉孝演じるレスポールJr.という正統な王位継承者が伝説になる始まりの一日、出勤する電車の中で見た外の景色は澄み渡る青空で、なんだかその青が王子が身に纏う青と同じ色に見えて少しだけ泣きました。私も晴れて(?)原担になりましたので、彼らのさらなる活躍を祈って乾杯!!と劇中の台詞を引用しこの記事を締めようと思います。閲覧ありがとうございました。